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何年経っても形が定まらず。イロイロ、テキトーに書いてます。
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◇誰もが忘れた頃に

日曜日に仕事に行った時にルーズリーフ探してたら出てきました。
続きはいつになるのやら。


◇設定資料。

以下、発掘したメモ類。完全にやりたい放題。

○バンディス・セリエ公国
北方の丘陵地帯やさらに北極山岳地帯までのバンディスと南方に広がる平野部セリエからなる連合国家。古王国時代には規模に関わらず民族同士の紛争が多かったが、古アルセリエ王国騎士が北進して平定した。
その物語は「飛翔の騎士、巨龍を月の海に沈めたらしむ。其は風なり。」という伝承で現代にも伝っているが、それが騎士が龍を退治したことで世を治めたとも、龍の用に巨大な力を持った古民族の長を倒したとも解釈され、長い年月の間に風化されそれぞれの地域に根付いた形で様々に形を変えている。

国の成り立ちから騎士の国であるが、およそ他国が騎馬兵が多いのに対し、この国では超重装備の屈強な戦士「装甲騎兵」が多いのが特徴である。見渡せる程広野な戦場ほどその能力を発揮し頑強な鉄壁となって戦場を覆い潰していく。また拠点防衛能力も高く、一個大隊の長などになれば、あらゆる武器を使いこなし一騎で戦局を変え得る力を持つと言われている。
士官には長い名前の者が多いが、通常2番目が本人の名前。
主人公の場合、ウェル~が親父とか偉い(何か歴史的な実績を残した)御先祖の名前。マークスウェルが本名。ゼンは位を表わす冠名で、アーカムシャードは直系の家の名。
「アーカムシャード家の子孫でウェルセルべノムって偉い先祖(親)がいました。名はマークスウェルで国王で~す」ということ。

若き国王
ウェルセルべノム・マークスウェル・ゼン=アーカムシャード
26代国王。早逝した先王の第四子。三人の側室いずれかの子と表向き言われているが、真実を知っている人間は王宮の中にも少ない。禁忌である竜人の子。
己の運命にはまだ気が付いていない。成人前だが隣国から妃を迎えることになっている。
長身だが細身の印象。赤みがかかった黒い髪はこの国では強い男の象徴であるが、戦士に連想するには顔立ちがまだ幼すぎる。戦場の経験はない。
運命の鷹。一応主人公。

装甲騎兵団団長兼び第一龍撃師団長
ランバ・ストラウド・セファム=ウォータブレド
古王国時代から主人公の家に使える騎士の嫡男。家柄、実力共に申し分なく、異例の若さで将軍職を拝命している。ただ、第一龍撃師団長を同時に拝命しているが直接飛竜と対峙した経験はない。あくまで有事の際にと形だけの位にすぎない。
主人公にとって乳母兄の存在(ストラウドの母が育ての親のようなもの)であり、肉親と言える存在。
身体が熊の様に大きく、あらゆる武器に精通した「歩く城壁」。戦闘力云々よりも兵員を失う数が誰よりも少ないことから部下からの信頼が非常に厚い。しかし付き合いの少ない人物、特に女性陣からはその風貌もあって他人嫌いと誤解されることが多い。未だ浮いた話は一つもなし。
好きな食べ物は鳥の衣揚げ。

機兵団歩兵連隊・遊撃隊長
リィナス・ブランセルバック
母が西方の出身。この国では珍しく黄金色の髪の持ち主。珍しい者扱いされることは慣れているが、反骨精神が二本脚で立っているような生き方をしてきたためか、ストラウドとは違う意味で人付き合いが苦手。
端正な顔立ちでかなりの美人であるが超ド級無愛想。
父は名将の一人であるがその名は名乗っていない(幼い時に飛竜討伐中に戦死している)。今の名は母の国での名である。
機兵団遊撃隊は他の部隊でも有名な程かなりの練達者揃いであると同時に変わり者の集まりであるが、実力で信頼を得ている。ただ、この地位にいられるのは機兵団長バッハルホーンが父の盟友であったことからでありそれを自覚している本人は苦渋の日々を送っている。
士官候補生時代の同期であるストラウドが将軍職に就いていることも本人の大きなフラストレーションの一つ。
遊撃隊員(新兵)時に飛竜討伐経験があり、その時すでに双剣にて軍最速記録を出している。
戦場では鬼と化す。
目を開けたまま寝る癖がある。

タイガ、バンドー
機兵団所属の技術士官。兵装の管理や新装備の開発、試作運用などを手掛ける・・・ということになっているが、実際は王直属のある機関の隊員。主に諜報活動が任務である。
彼らは各団に機兵団から配属されている形になっているが、派遣先では団長が直轄の上官になる。よって自然と命令できるのは王、及び四団長クラスの将軍だけとなる。
どのくらいの人員の機関であるのかも王国幹部しか知らない。


○アステア王国
バンディス・セリエ公国の東部に位置する小国。
小国といえど、霊峰シハバムの麓、豊富な天然資源を蓄え栄える有力国家。鉄鋼及び希少な鉱石の産地として近隣諸国と貿易をして発達した。
シハバムには古の時代から神の如き龍(地域によっては古龍と呼ばれる存在)が住まうと言われ、永きに渡り人と龍との時に激しく時に緩やかな交流が続く状況は、龍自体が旧世界の存在とされる他国家とは大きく異なる。よって龍を神象化し、他国とは異なる独自の文化圏を築いている。
稀に極めて希少価値の高い霊石、珠などが世に出回ることがあるが、何か超常的な方法で古龍から授かっているとか、伺い知れぬ方法で古龍を倒し手に入れているとか、様々な噂が絶えない。そういった風潮もあってアステア産物は非常に高い価値で取引される。

近年、史上にないほど他国と交流を始めており、この年にも王家の姫を隣国の若き王に嫁がせ国家間での提携を結ぼうとしている。


アステア国神王の第2子にして長女
アスカ・ヤリトィ・ヒヨラク
神王(国王)の正室にして「アステア最高の才妃」「海の神がつかわした者」と呼ばれる王妃ルリオラの子。表向きは華やかな宮中にて蝶よ花よ、と育てられた麗しき皇女と思えるが、裏では残酷な継ぎ目争いの渦中で生きることを余儀なくされ、母の命によって幼くして他人の命を絶つ(間接的にではあるが)ことなども経験している。
その状況で育ったため、あらゆることを達観してしまっている。
真直ぐに下ろした濃い藍色の髪と絹の肌に深くつややかに浮かぶ眼が印象深い。
言動や容姿などで誤解されやすいがまだ15の齢を迎える前である。
人形のように意志や感情を殺している自分と、それを客観的に見つめ悲鳴をあげながらもまだ絶望をしていない「真の自分」とが、まだ胸の奥でそれぞれを確かめられずに生きている状態。
覇権争いに怯えながら過ごしていた中で、突然に降ってわいた「輿入れ」。様々な疑惑を持ちながらもそれを受け入れる。
宿命の月姫。


サネ
アスカのお付きの者。長年仕えており主従関係はあるものの冗談を言い合える仲。
隣国に嫁ぐ主人に付いて国を出る。
双子の姉がいるようだが・・・。


○その他
クリス
旅の者。褐色の肌がさらに日焼けし、健康的な美しさがある。
それもそのはず女性であるが、今となっては古風な狩人の装備をしているのもあり、気付かれることが少ない。
立派な体躯と、使いこなした(使い古されたともいう)戦斧を武器に、今日も気ままに戦場をさすらう。
自称ハンターだがギルドから派遣されているのかは皆無。
ボウガンの下手さに関しては右に出るものはいない。

オヤジ
誰も本名を知らない隠れ鍛冶屋。クリスのことを気に入り、霊峰にあるという秘宝の伝承を教える。
他の職人をしている竜人と変わらず、人間にも屈託なく接する気の良いオッサンだが、ボウガンに対する興味だけは人一倍のクリスには毎度苦言を呈す。

ヤッチャン
年齢不詳のオヤジの右腕。唯一解っているのは人間ということだけ。
人間の中でも相当腕の良い鍛冶屋のはずだが、いつもクリスの試し打ちに付き合わされバレルばかりを直す日々。ただ、百戦錬磨のポンコツ剣斧が今でも現役バリバリなのは彼のお陰ということは、使い手のオテンバも理解している。
口癖は「アイルーじゃ、こうはいかないよ!」



本当は一人一人の装備なんかも考えてあったんですが、それこそ中学レベルの悪ふざけだったので流石に恥ずかしくてオミットしました。

でも続きを書いてみたい気持ちはあるんだなー。いつになるかは自分でも知りませんが。

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強靭な健脚と頭部の巨大な角を使い、地中をも掘り進む巨大な飛竜の名はディアブロスである。

主に熱帯や砂漠を根城とするこの角竜は、そのテリトリーに侵入したものは全力で排除する。
激しい咆哮で敵を怯ませ、棍のように太くしなる尾で叩きつぶし、強烈な突進と鋭い地中からの奇襲は全てを粉砕する。

その中でも特に巨大で、堅固な甲殻が白銀に輝く一本角の亜種をモノブロスと呼ぶ。

「幻の角竜」と呼ばれ、出没すること自体稀である、この飛竜がなぜ目の前にいるのか。
軍の中でも特に”目”と呼ばれる特務兵であるタイガであっても、この突然の状況が理解できなかった。
獲物を視認した白角竜は身を翻し、あっという間に地中へと姿を消す。その動作の意味を理解しながらもその振動に身動きができない。

この状況を速く、隊長に伝えなければ、いや、今この場にいる兵どもに退避命令を出すのが先か。

いつもの冷静さを失った頭が混乱したそのコンマ数秒のうち、小刻みに振動を繰り返す地表の異変に気がつく。水面で言えばさざ波に見えるそれは、角竜が地中から獲物を狙い、飛び出さんと力をためていることを示している。

見える。
その地獄へといざなう”旋律”がひどくゆっくりと「見えてしまう」。

ガアァァァアアア!!!

咆哮一閃、地中から噴火するマグマのごとく中空へと飛び立った角竜は、そのたくましくも凶悪な角にて兵士たちの体を引きちぎり、白亜の体に血の花を咲かせる。

咄嗟に屈んだことで即死を免れたタイガであったが、直後に控えていた銃士の上半身が消し飛ぶのを見、その傍らを舞うのが自身の右腕と理解したのも柄の間、地面にたたき落とされる衝撃で視界がゆがむ。

首を回すこともできない状況で”伝達珠”が右半身ごともっていかれたことだけが悔やまれた。
色気のない話だ、こういうとき他に思い浮かぶことはないのか。抱いた女や仲間の顔、家族達。
・・・母親か。そういえば随分会っていない。

翼を大きく広げ、低重心の姿勢をとると、角竜は突進の構えをとる。

・・・畜生なんて尊大な姿だ。
砂嵐をまとった雄々しい足が振り上げられた。視界に被さるように鈍く光る爪が近づく。

「ち、くしょ・・・。」

それがタイガが見る最後の景色になった。






平野を走り行く、一人の影。
滝のような汗がその女の首すじを伝う。

機兵団歩兵連隊・遊撃隊隊長リィナス・ブランセルバック。
女性の身でしかも他国者の血を引く彼女は、しかしその類稀なる格闘センスを買われ小隊長を拝命している。
今回は本来の彼女の任務ではないが姫君を迎える女性士官の一人として、列席を命じられていたのだった。

細く色が薄いおかげでその一つ一つがつややかに煌めく金の髪は、つい先刻までは見事に結いあげられていたが、結い留めやかんざしは既に外され、今はなびく風そのままに流れている。
迎賓用の底高の靴も随分前に脱ぎ棄てられている。走りまわっているおかげで、足裏には血がにじむ。

伝う汗もこめかみから遂には顎の淵まで落ちたが、それを気にしている暇はない。

ギィイアアアアアア!!

後ろから迫る凄まじい咆哮の後、深林の巨木に見紛う白き巨大な尾が繰り出される。
自分の体を後ろから薙ぎ払うのを狙うそれに対し、急停止をかけると無謀にも迫りくる巨塊に向けて突進する。激突の寸前、バネのように下半身を跳ね上げ一回転する。自分の頭の下、その金髪スレスレを尾甲が高速で行くすぎるのを確認すると着地するや否や、また全力で飛びつく。

狙うは一つ、奴の一本角。

必殺の薙ぎ払いを寸ででかわされた白角竜は、回転力そのままに、今度は自慢の角を突き出してくる。それを逆手にとって、カウンターの一撃を見舞う。

「ぃやぁあ!!」

バキッ!

金属の砕ける音と共に握っていた右手がしびれる。最後のかんざしが根元から折れ、これで手持ちの「武器」はなくなった。

「くっ、無駄か。」

あわよくばと放った渾身の一撃は角への致命傷になるはずもなく、そのまま額を蹴って回避に移る。しかし角竜はその機を見逃さない。

グゥウウウンッ!

「ぐぁっ!」

その強靭な後ろ足を踏ん張り、胸をそらす形で首を振り上げた角竜。
受け身をとり直撃を受けることは免れたが、絶対的な質量の差がある。甲殻の張り出した肩からタックルを受けた左腕は異常なほどはれ上がり、熱いような冷たいような気色の悪いしびれを生み、そこから次第に激痛へと変わる。

「ッ! はぁっはぁっはぁっ・・・」

しかし、駆けるのを止めてはならない。一地に留まれば、必ず地中からの突進の餌食になる、地中から引きずり出すすべをもたない今の状態では、地上に引きつけなければ後がない。

悠長に回復薬を飲んでいる場合ではない。彼女は腰の革袋に忍ばせた活力剤を一息に飲み干すと、己の回復力に懸けた。
式典用にあつらえられた女士官用の長い丈のローブを膝下でちぎり走りやすくしたが、それは下の皮鎧とともに、竜との幾度かの邂逅でほとんど擦り切れてしまっている。武器らしい武器を持たずとも、常人離れした運動能力を生かし戦場を駆けれたのも、相手が人間であったからこそ。さしたる武具もない今は反撃もままならないが、姫の安全のため、なるべく注意をこちらに引きつけなければ。

自分の位置と守るべき者の位置を把握しながら、角竜の間合いからは僅かに逃げる。
敵を斬り、倒し、打ち砕いてきた自分にとって「守る」行為のなんと難しいことか。
しかしこれでは遊撃隊長の名が廃る。

「・・・さて、どうしたものか」

左腕をかばいながら、今はただひたすらに駆けることに専念した。

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◇電撃企画

モンハンの話を書いてみることにしました。
といってもモンハンの話じゃないよ。
ヒントを得たというか・・・。外伝的な。

「モンスターを狩りました」じゃ、話にならないので(笑)

「小説」ならぬ「小話」ってことでお送りします。

いつもながら思いつきなので、生暖かい目で見守ってください。



『竜の民』

 -序ー

 いつからだろうか。風の匂いや土の匂いが、大いなる息吹に感じるようになったのは。
 いつからだろう、水の流れや日の輝きが、深淵なる脈動に感じるようになったのは―――。

 恐くなって、夜になって母に泣きつくと、こう仰ったものだ・・・
 「それは龍神の言葉、龍神の鼓動。敬っても恐れることはありません。あなたの『竜人の血』がそれらに応えているのですよ。」
 その言葉よりも、温かさに包まれていることで、いつも寝付いてしまっていた。

 あれから幾月が経ったのだろう。星の巡りは変わらないが、あの温もりにだけは二度と・・・

 「若、鷹は北の谷に下りたようです。」

 「・・!??」

 不覚だった。
獲物を追って辿り着いた草原は南に向けて緩やかに下っており、午後の陽光を受うけて一様に良い色だった。
それに見とれて物思いに耽っていたことなど悟られまいと・・・

 「ストラウド、獲物の所在が掴めたならば直ぐに伝達するのが道理ではないのか。」

 騎上で振り返らず、後方に控えていた家臣の一人に声を掛ける。
 ちらと、見やるとあちらも何も気が付いていないフリで、ただ目だけは「仕様のない方だ」と言っている。
 
 単騎馬陣形の狩猟の際に着装するケルビ毛皮の鎧を、代々、古王家時代から仕える将軍家特有の蒼に染めている。馬に乗っているこちらの高さと流石に同じとは言わないが、それでも体躯のよさが大きく目立つ。銃床だけ簡易なものにしているが、雷海龍から作られた銃身を背負うその姿は正に『蒼き戦車』といった風情。彼は史上最年少の将軍にして、この国の装甲騎兵団を指揮する騎士団長の一人。ランバ・ストラウド・セファム=ウォータブレード。
 そして私の乳母兄でもある。

 「は、申し訳ございませぬ。されど鷹ほどの大きさになれば千里眼薬も役に経ちません。”目”と”耳”に当たらせ、探し出しました。」

 「・・・あの二人を呼ぶほどのことだったのか。」

一度城に伝令を送ったということだ。しかも戦時下においてしか活動しない彼らを使うとは。
少しため息がでた。

 「鷹の羽飾りは式に欠かせないものですので。」

 式に欠かせい・・か。
 愛馬の首を少し撫でてやりながら、こんな時に母を思い出すとはまだまだ未熟なのかと自問してしまう。
本格的なため息を一気に吐き出し、空を仰ぎ見る。

 鷹の舞い逃れた北の地平の上には、昼の月が淡く浮かんでいる。
なんの巡り合わせか、母がこの国に嫁いだのも今の時期だったという。

 
また息吹が流れる。緑の草原が揺れる。
 
北の地から一羽の鷹が飛び立つ―――。


 戦人の本質を問うたことはない。
 母君は、そういうことよりも自分の領域を場内に広げることに躍起であったし、自分のために娘を「使う」ことは一度や二度ではなかった。
 そのあまりの見事さに、家臣は『知慮に長けた聡明な御仁』とみている。あの父上がそれでも傍におくのは、父の邪魔をしない、立場をわきまえている、という印象を巧みに演出しているからだった。

 今回の件にしても、政治的な取り決めなのは仕方のないことだ。一国の姫に生まれた時点で覚悟の上でもある。 しかし、あのとき母君は、私の前で泣いた。あたかも辛いことだというように。身が裂かれる思いだとでもいうように。
 皆の前で泣きはらしてみせた。

 その心根の凄まじきこと。面が厚いという類のものではない。
 ここに至っても、あなたは私に心を開かないですね。なるほど、だからこそ、私のようなものが生まれた。
誰にも心を開かない、従順な人形・・・。

「姫様、ご立派ですね」

 ふと、付き人の一人が声をかける。
 名をサネと言う。幼少から私に仕えるお付きの一人。

「立派・・とな」

 視線だけ向けながらそれとなく問いてみる。

「・・・はい。定めとは言え、話できいたことしかない国の、見たこともない御人に嫁がれるなんて。」

「なにを申すか。もともと王家にとって空気にも値しない私くらいには丁度良いことじゃ。・・・サネ、私を慰めておるのか。」

「いえ、そんな!私はご立派だと言いたいだけです。本来ならまだ、婚礼を挙げられる御歳でもないはず。しかも・・・・。」

「・・なんじゃ。」

「あの国では、女も戦場に狩り出すとか。」

「ほう。」

「それに着物は全て鉄で出来ているとか。」

「ふむ。」

「しかも、牛を食べるんですよ!!?信じられません!」

「・・・ん、なんと。それは困った。」

「・・姫様、本当にいいんですか!?」

「だからお主は何が言いたいのじゃ。」

 こう長く一緒に入ればお互いの事は口にしなくとも、すぐわかる。サネもまさか世話人達の噂話など本気にはしてはいまい。私の気が少しでも和めば、とおどけてくれているのだ。

「本当にご立派です。」

「そういうと皮肉に聞こえるが。」

「左様でございますか。」
 大げさに首をかしげて見せる姿も演技かかっている。

「・・安心せい、サネも一緒に連れていくつもりじゃ。」

「ふふ、それは困りました。」

「牛を気のゆくまで味わえるぞ。」

 サネは、困った困ったと言いながら、いつもの親しみのある笑顔を私にむける。
 私も目を伏せながら、笑った。本当に頬が痙攣したような些細な笑い方ではあったが。

 束の間の談笑であったが、張りつめた空気が和んだように思う。話を聞いていたであろう、部屋の外で控えている者達サネと同じ、もしくは少しばかり下の者達)までもいくらか落ち着いた様子だ。

「では、私はまだ準備がありますので失礼致します。ゆっくりとお休みください。」

 部屋から出て行こうとして、直前になりこちらを見ずサネは言った。

「姫様、あなたは決して一人ではありません。私がいつもお傍におります。」

「・・・うむ、ありがとう。」

 

”そう言うと皮肉に聞こえる”。


 あなたは一人ではないと言ったサネの瞳と、

 ありがとう、と応えた自信の胸の内・・・。

思い返し胸の奥がひどく疼く。


私は知っている。

彼女が母君の手の者だということを。

私は知っているのだ。

 彼女が焚いた火鉢の炭が、パチンと弾ける。
 本来なら暖かさを感じるはずの音が、胸に突き入る様で思わず振り返る。

今日も眠れそうにはない――。



 出立の日、煌く白金の鎧をまといし一団が迎えにきた。
 甲羅竜の背に揺られながら籠の外をそれとなく覗いてみると、一際大柄な甲冑姿が目に入った。かくも他国の武人は派手好みの様相。白金に蒼の装飾のなんと絢爛なこと、その目立つこと。あの出で立ちでは戦場でここを弓の的にせよと言っているようなものだ。

 あまりに見過ぎていたのか、相手からも見られていることに遅れて気付く。兜に半ば隠れていても無表情と伺えるその顔からは何を考えているかは分からない。
 しかし、鎧姿から見るに殿に近しい者、側近と思われるので、その姿から主の姿を想像してみようと、それでも見つめ続けていた。

ふん、なんじゃこの唐変朴め。

 することも無い道中、暇を持て余してついた悪態。
 聞こえるはずの無い内の声に、唐変朴の表情が変わったと思った時だ。
 その時は唐突に訪れた。


「各個、警戒しろ!!」

ドォォーン!

 上がる怒声に、甲羅竜の地鳴りの様な悲鳴。どこからともなく起こった爆発とともに視界が大きく傾き、尋常でない振動を籠に伝える。窓からの景色はちぎれ雲の浮かぶ空だけに

なり、一瞬上下が分からなくなった自身の安全に気を回している間に、ぶしつけに鳴る角笛の音に思わず身を固くする。

 野盗や大獣の類ではない。統率された集団の襲来。
しかもそれはーーー。

 ランバはまず状況の確認をした。

 兵の数はこちらが少ない。状況によっては私も無傷では済まないか。

 謀られたことについては後で存分に怒るとして、今は優先事項を整理する。
 相手の狙いは明らかだ。包囲網を抜けるにはまず防御に徹し、タイミングをみて薄い所からぶち破るしかない。

「タイガ、バンドー、それぞれ西、南だ。三点角で姫君を守る。優先事項は姫の死守、いかなる障害も全力で排除!責任は俺が取る。」

「了解です!」

「は!ですが、今の場所からだと北側が手薄になります。」

「問題ない!まずは目の前に集中しろ!」

「了解ッ!」

 兵士の数は3箇所にそれぞれ4名ずつ。一個中隊規模であるが装備が装備だ。自分を含め全員が式典様装備である。カブレライト合板の盾は防御力としては十分でも、獣の意匠を

施した装飾の類をみればおよそ機能的とはいえない。私も使い慣れた装甲兵の装備ではないのが悔やまれる。

 まぁ、北側には奴がいる。かんざし二本でもあれば十分なはずだ。

 先ほどまで騎乗していた愛竜の死骸の陰から敵陣を伺う目を走らせる。この平地を囲むように草茂る土手に待ち伏せされたのは明らかだ。
 先程の爆発は地雷の類ではない。地雷ならまだいい、あれは今の状況にとっては最悪と言える。

ガチャリ

「数は4。一つはなかなかに遠距離です。」

”耳”であるバンドーから伝達が入る。

「指揮官が見えない。個々に独立して狙ってきている。もし

かしたら暗部かもしれん。」

 こちらは”目”タイガの情報だ。

 互いの部隊は距離にしてそれぞれ30mずつは離れている。
 ここで役に立つのは装備にはめ込んだ「伝達珠」の効果だ。距離が離れれば効果は薄れるが、この距離ならほぼ完璧に情報伝達が行え、私自身が”目”であり”耳”となり、部下もそれぞれまるで私になったような感覚だ。

「第2波、来ます」

「閃光玉投てき後、敵状確認。多分、光対策しているのでそれ自体に意味はないが注意をこちらに向けるだけでいい。」

「了解、援護します。」
 タイガが鳥竜のゴーグルを着装したのを見計らって、それぞれが2、3発閃光を投げ込む。味方を囲む様に四方に閃光の花が咲く。

 それにやや遅れて、ヒュウンと耳触りな風切り音が続き、ブシュと鈍い衝撃が壁にしている死肉に伝わる。
 その直後に激しい衝撃が盾に預けた体を揺さぶる。血生臭さとツンとした火薬の匂いが鼻腔を刺激する。 拡散弾の集中砲撃を受け、先ほどまで竜であった肉は爆ぜ、臓器を散らし、辛うじて残る四肢が原型を留めているに過ぎない。
 最早壁としての役割も果たさなくなった肉塊をみて、敵は留めを撃ち込もうとするはず。

「装填音無し、速射で第3波、きます。」

 まだだ、もう少し引き寄せる。

ズガガァアン!

「くっ!」

 思った以上の衝撃に一瞬背中に冷たいものが流れたが、体は動いていた。

「装填音、2時方向、6時方向、9時方向!11時方向には確認できず!」「移動している形跡も無し!」

 ”目”と”耳”の情報は逐一伝わってくる。予想通りと確認しながら爆風にまみれながら、抜剣する。

「突貫!我に続け!!」

 味方ガンナーの弾幕援護を受けて、一直線に眼前の林に向け駆ける。葉の色に擬態した装備の敵を視認するや、敵が銃口を向ける前に剣を投げつける。

「はッ!!せりゃ!」

 敵銃兵の右肩に突き立ったそれはそのまま背後の木の幹に敵兵を標本の如く釘打つ形となり、投げつけた勢いのまま前転すると、全体重と遠心力を乗せた盾の一撃を頭部に見舞った。

 盾に付けられた獅子の装飾が額から頭頂部の装甲にかけてめり込み、さながら獅子の印を押された敵兵は、顔にあるそれぞれの「穴」から血を噴出させ、奇妙な呻きをあげると動かなくなった。

 その敵銃兵を援護するはずだった傍らの敵剣兵は、その電光石化の動きに怯む。その隙を逃さず続く部下たちが数に物をいわせ囲みこむ。

 数刻も立たずして、1拠点の制圧を完了する。
 部下に少し離れてしまった他部隊に報告をさせる。

 囲まれた状況はなんとか打開されたようだ、これから北東に姫を退避させつつ、陣形を張りなおせばいい。それから城の本隊の到着まで持ちこたえればいい。

「・・ふぅ、野戦は苦手だ。」

 軽剣にした血を簡易的にも拭いとると、敵兵装備を見る。
 軽装に見えて、良質の鉱石の鎖を重ね合わせたことで強度を備えた独特の鎧、反りの有る片刃の剣・・・。

 間違いない。アステア王国の兵士だ。

「跡目争いや派閥の争いなど、小さい内乱が絶えないという噂はきいていますが、これほどとは。」

 兵士の装備は、眠剣や麻痺剣の類ではないし、銃兵にしても、対飛竜ではなく対人より兵装が多い。高威力の散弾の予備弾を見つけた時には確証に変わった。

 明らかに自国の姫を暗殺しようとしている。しかも我らが国内にて。そこには政治的な問題が大きく絡んできているのは明らかだ。今回も国家間の結婚も表面上相互の発展協力を高めていく目的であったが、やはりなんらかの陰謀が隠されていたのだ。

 どうして敵兵の侵入を許したのか。

 いや、そもそもアステアの本当の目的はなんだ。


「・・・気を抜くな、また戦闘中なのだぞ。一番近い南側を経由して姫様の確保に向かう。陣形を整え直せ。」

 今考えても仕方がない。自分に渇を入れるつもりで部下に檄を飛ばす。

「タイガはどうした、西側の状況は確認できないのか。」

「ス、ストラウド将軍、バンドー技術大尉からです!
『至急退避サレタシ 至急退避サレタシ』以上!」

「なんだと!?退避?いったい・・・。」

!?

 異質な、明らかに異質な感覚がこの場を埋めていくのを感じる。物事を体に伝える全ての感覚が捻じ曲げられるような感覚。そう、あたかも自身を圧縮されているような・・

「し、将軍!!?」

 部下が悲鳴を含んだ声を上げる。敵兵の死体がゆっくりと立ち上がる。
 まだ生きている、そんなはずはない。割れた額から流れた
血が鎧を濡らす。まだ乾かないそれは、尋常ではない出血の量を示している。

 首をもたげた敵兵の亡骸は、やはり意思をもって動いている風ではなく、しかし、立ち上がった状態のままだ。
 ふいに紫炎が吹き出すと、死体を覆っていく。敵兵それぞれ、少しずつ紫の炎ーそう呼ぶには暗すぎるーに覆われ、同時に姿を消していく。

「な、なにが起こっているんだ・・・。」

一点に集約されつつある紫の光はやがて輝きを増し、中空で大きな球体を形成し始める。
 それが一段と光り輝き、巨大な閃光になって当たりを包み込むと、消滅した。



ギィイアアアアアア!!

その場に居た全員がその、空気切り裂く咆哮に耳を押さえた。

ランバの身の丈の2倍はあろうかという、巨大な尻尾をしならせ、その先端についた巨大な岩石状の甲殻を大地に叩きつけ轟音を響かせる。
額からは白く輝く一角を天に伸ばし、強靭な二本の足は大地を抉り進む。

白亜の飛竜『モノブロス』。

光の中から出現した、この荘厳なる巨竜は、それまでの人の争いをあざ笑うかのようにその場を見下ろし、見上げる者たちを絶望の淵へといざなった・・・・。


◇いつもの

モンハンは決してこんあゲームじゃないです(笑)

この後は不定期発表です。

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プロフィール
HN:
empty_dall
性別:
非公開
職業:
人の間に割り込んだり割り込まされたりして滑りをよくする潤滑油的な何か
趣味:
文化的なこと多方面。映画、音楽、ゲーム。サッカーは専ら観るだけに
自己紹介:
どういう人かって他人に聞いたら「静かな人」
自分としてみたら「理屈っぽい人」

酒に酔うとさらに真面目になり、持論を展開して語り始める。気が付くと周りの全員がうなづき聞いている。本人はおちょこで酒飲んでる。動画で撮られてた。本人だいたい覚えていない。
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